犬と猫の慢性腎臓病は、近年増加傾向にある深刻な病気です。腎臓は体内の老廃物や毒素を体外に排出し、水分や電解質のバランスを維持する重要な役割を担っています。しかし、慢性腎臓病になると、これらの機能が徐々に低下し、様々な健康問題を引き起こします。
この記事では、犬と猫の慢性腎臓病について解説し、本疾患についてより多くの方に知って頂ければと思います。
■目次
1.症状
2.原因
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法とご家庭での注意点
6.まとめ
症状
腎臓は75%以上がダメージを受けるまでは正常に働くため、初期にはほとんど症状が現れません。しかし、進行するにつれて、以下のような症状が現れるようになります。
・多飲多尿
・食欲不振
・嘔吐・下痢
・体重減少
・毛並み悪化
また、腎臓から赤血球を作るホルモンが分泌されるため、重度になると粘膜が白くなるなど、貧血に起因する症状も見られるようになります。
さらに進行すると、老廃物などの有害物質を体外に排出できなくなり、尿毒症を発症します。これにより、口臭がおしっこのような臭いになったり、ひどい場合は痙攣や意識混濁を引き起こすこともあります。
原因
発症原因は明確になっていないものの、高齢の犬や猫で多く見られます。
加齢の他にも、慢性的な腎臓への負担(尿路結石、感染症など)、免疫異常、腫瘍、高血圧などが原因として考えられます。
診断方法
慢性腎臓病の診断には、以下の方法が用いられます。
・血液検査
血中の尿素窒素(BUN)やクレアチニンの値を測定します。これらの値が高い場合、腎臓の機能が低下している可能性があります。しかし、これらは腎臓が75%ほど障害がみられないと異常値として測定できないため、より早期に腎障害を発見できる項目として、SDMAというものも用いられています。
・尿検査
尿の比重や蛋白尿の有無を確認し、腎臓の状態を評価します。
・画像診断
超音波やX線を使用して腎臓の形状や大きさを確認します。
・血圧測定
高血圧が腎臓病の進行を促進するため、定期的な血圧測定が重要です。
治療方法
慢性腎臓病は完全に治療することは難しいですが、症状の症状の緩和と腎臓の負担の軽減を目的に行います。
元気と食欲がある場合は、腎臓病用の療法食で食事中のリンを制限します。
また、高血圧や蛋白尿が認められる場合には、降圧剤(ARBやACEIなど)を投与し、脱水がみられる場合には、皮下輸液を行います。
予防法とご家庭での注意点
明確な予防法はありませんが、なるべく早期に発見して進行を遅らせることが重要です。
しかし、初期段階では症状が現れないこともあるため、特に中高齢の犬や猫は半年に1回、動物病院を受診し、健康診断を受けるようにしましょう。
まとめ
慢性腎臓病は治る病気ではないため、治療は長期にわたります。元気そうに見えても、定期的に検査をして、早期発見することが大切です。
◼️関連記事はこちらをご覧ください
腎臓病について①
腎臓病について②
栃木県佐野市にある犬、猫専門動物病院
させ犬猫の病院