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犬と猫の口腔内腫瘍の治療法と診断|症状の見分け方を獣医師が詳しく解説

愛犬や愛猫の口の中にできものを見つけたとき、それは口腔内腫瘍かもしれません。

「腫瘍=がん」と思われることもありますが、良性のものもあれば悪性のものもあります。
また、早期に治療を始めることで、完治が期待できるケースもあるため、早めに見つけることがとても大切です。

今回は、犬や猫の口腔内腫瘍について、その特徴や症状を詳しく解説します。

■目次
1.口腔内腫瘍とは
2.口腔内腫瘍の主な症状
3.診断方法
4.治療法
5.予後と生活の質
6.予防法と早期発見の重要性
7.まとめ

 

口腔内腫瘍とは


口腔内腫瘍とは、唇や顎の骨、扁桃腺など口の中にできる腫瘍のことを指します。これらには良性のものと悪性のものがあり、犬と猫では発生しやすい腫瘍の種類が異なります。

<犬の口腔内腫瘍>

・メラノーマ(悪性黒色腫)
犬に最もよく見られる悪性腫瘍で、特に高齢の小型犬に多く発生します。トイ・プードルやミニチュア・ダックスフンドでの発生が多いです。

・扁平上皮癌
メラノーマに次いで多く見られる悪性腫瘍で、主に高齢犬に発生します。

・線維肉腫
悪性腫瘍の中では扁平上皮癌に次いで多く、他の腫瘍に比べると若齢犬にも見られ、子犬での発生も報告されています。特にゴールデン・レトリーバーなど大型犬の上顎に発生しやすいです。

・歯肉腫(エプーリス)
犬で最も多く見られる良性腫瘍で、年齢を問わず発生することがあります。

<猫の口腔内腫瘍>

・扁平上皮癌
猫で最も発生率が高い悪性腫瘍で、全体の約7割を占めています。高齢の猫でよく発生します。

・線維肉腫
扁平上皮癌に次いで多く見られる悪性腫瘍で、高齢の猫によく発生しますが、若い猫での発生も報告されています。

 

口腔内腫瘍の主な症状


腫瘍が小さいうちは、ほとんど症状が現れないことが多いです。しかし、腫瘍が大きくなるにつれて、次のような症状が見られるようになります。

・強い口臭
・よだれが増える
・口や鼻からの出血
・食べづらそうにする
・食べ物や水が飲み込みにくい
・体重の減少

 

診断方法


診断では、まず視診と触診を行い、腫瘍の場所やサイズを確認します。しかし、これだけでは腫瘍の種類までは分からないため、腫瘍の一部を切り取って検査する生検によって確定診断を行います。

また、腫瘍が体全体に与える影響や転移の有無、進行度を把握するために、血液検査や画像検査も併せて行います。

 

治療法


口腔内腫瘍の治療には、主に以下のような方法があります。

<外科的治療(腫瘍切除術)>

手術で腫瘍を切除します。転移する前に腫瘍をきれいに取り除ければ、完治が期待できるケースも少なくありません。

<放射線療法>

メラノーマや歯肉腫、扁平上皮癌に適用されます。手術が難しい腫瘍の局所コントロールとして行われるだけでなく、手術と組み合わせて根治やサイズの縮小を目指すこともあります。

<化学療法>

メラノーマや扁平上皮癌など、遠隔転移のリスクが高い腫瘍に対して行われる治療法で、腫瘍の種類に応じて抗がん剤が選択されます。
ただし、化学療法単独ではなく、手術や放射線療法と組み合わせて行うのが一般的です。副作用は少ないですが、食欲不振や嘔吐、免疫力低下が見られることもあります。

<免疫療法>

免疫療法は、免疫力を高めてがんを攻撃する治療法です。
比較的新しい治療法で、副作用が少ない点からも注目されています。特に犬のメラノーマに対する効果が期待されています。

<緩和ケア>

積極的な治療が難しい場合には、生活の質(QOL)を高めるため、痛みを和らげるケアやサポートを行います。

このようにさまざまな治療法がありますが、基本的には外科的治療が第一選択となり、他の治療法を補助的に組み合わせることが多いです。

腫瘍の種類や年齢などに応じて治療法も変わるため、かかりつけの獣医師とよく相談して決めるようにしましょう。

 

予後と生活の質


予後は腫瘍の種類によって異なりますが、腫瘍が局所にとどまっており、手術で完全に取り除くことができれば完治が期待できるケースも少なくありません。
しかし、腫瘍が大きくなっている場合や、リンパ節や他の臓器に転移している場合は予後が悪くなり、多くの場合で緩和ケアが選択されます。

また、悪性腫瘍の場合は周囲の組織や顎の骨まで広がっていることが多く、手術で切除しても再発のリスクがあります。

そのため、手術後も経過観察を続け、再発を防ぐために放射線療法や化学療法を併用することも検討されます。

 

予防法と早期発見の重要性


口腔内腫瘍の明確な原因はまだ分かっておらず、現在のところ確立された予防法はありません。しかし、早期に治療を始めることで完治が期待できる場合もあるため、いち早く腫瘍の存在に気づくことが大切です。

そのため、普段からご家庭で愛犬や愛猫の口の中を観察し、定期的に獣医師による口腔内チェックも受けるように心がけましょう。

 

まとめ


愛犬や愛猫の健康を守るためには、早期の発見と対応が何よりも重要です。口腔内腫瘍は進行すると治療が難しくなることがあるため、普段から小さな変化にも目を向けることが大切です。

定期的な口腔内チェックを通じて、少しでも異変を早く見つけ、適切な治療を受けられるように心がけましょう。

■腫瘍についてはこちらでも解説しています
愛犬・愛猫の命を脅かす腸の腫瘍について┃早期発見と最新治療法
犬の脾臓腫瘍について┃毎年の健康診断で早期発見を
犬と猫の鼻腔の腫瘍について┃鼻の中の腫瘍のほとんどは悪性
犬の乳腺腫瘍の治療法と進行速度|早期発見と予防法を獣医師が解説

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