愛犬のお腹をなでているときに、硬いしこりを見つけたら「もしかしてがん?」と心配になることもあるかと思います。犬の乳腺腫瘍は比較的多く見られる病気で、良性・悪性のどちらの可能性も半々です。
ただ、早めに発見して手術を受ければ、治るケースも多いため、なるべく早い段階で気づいてあげることが大切です。
さらに、乳腺腫瘍は早期の不妊手術で予防できることが多いため、事前に正しい知識を持っておくことも大事です。
今回は、愛犬を守るために知っておきたい乳腺腫瘍の治療法や、進行の速さについて解説します。
■目次
1.犬の乳腺腫瘍とは
2.乳腺腫瘍の進行速度
3.乳腺腫瘍の主な症状
4.診断方法
5.治療法
6.予防法と早期発見の重要性
7.まとめ
犬の乳腺腫瘍とは
乳腺腫瘍は、雌犬で特に多く見られる腫瘍のひとつです。5歳以下での発生は少ないですが、10歳以上の高齢犬になるとその発生率が高まり、特にトイプードルやダックスフンド、シーズーといった小型犬によく見られます。
発生には性ホルモンが関係していると考えられており、不妊手術をしていない犬では4頭に1頭が乳腺腫瘍になるともいわれています。
「腫瘍=がん」というわけではありません。乳腺腫瘍には良性と悪性の両方があり、その割合はほぼ半々です。しかし、悪性の腫瘍の場合、治療が遅れると命にかかわることもあるため、早めに見つけてあげることがとても大切です。
乳腺腫瘍の進行速度
乳腺腫瘍の進行速度は犬によって異なりますが、一般的には良性よりも悪性のほうが進行が速いとされています。
また、乳腺腫瘍の中でも特に悪性度が高く、進行が速いタイプが全体の約50%を占めるため、注意が必要です。
初めのうちは小さなしこりとして確認されますが、腫瘍が大きくなると皮膚が破れて化膿してしまうこと(自壊)があります。さらに、悪性の場合はリンパ節へ、そして肺や腹部の臓器などへと転移が広がっていくこともあります。
予後は、腫瘍の大きさや転移の有無、進行の度合いによって変わります。
特に直径が3cmを超える腫瘍や転移がある場合は予後が悪くなる傾向があり、末期の場合には積極的な治療を控えて、痛みを和らげる緩和ケアを選択することもあります。
乳腺腫瘍の主な症状
乳腺腫瘍は、初期段階では特に目立った症状が現れず、乳腺の周りに小さく硬いしこりができるだけで、自覚症状はほとんどありません。この時点では、痛みや違和感もなく、腫瘍自体のサイズも小さいため、日常生活に支障はないことが多いです。
しかし、悪性の場合は進行するとともに痛みが生じ、腫瘍が大きくなって皮膚が破れてしまう(自壊)ことがあります。
また、病気が進むにつれて体重が減少したり、肺に転移して呼吸が苦しくなったりすることもあり、最終的には命にかかわる場合もあります。
診断方法
まずは視診や触診などの身体検査を行い、必要に応じて細胞診で診断を進めます。
ただし、これらの検査だけでは腫瘍が良性か悪性かを正確に判断することは難しく、確定診断には手術で摘出した腫瘍の病理検査が必要です。
治療法
乳腺腫瘍の治療は、良性・悪性どちらの場合も、まずは手術による腫瘍の摘出が第一選択です。転移がなければ、手術だけで完治できることがほとんどです。
しかし、すでに転移が見られる場合や手術が難しいケースでは、抗がん剤治療や放射線治療が選択されることもあります。
予防法と早期発見の重要性
犬の乳腺腫瘍は、早期に不妊手術を行うことで発生率を大きく下げられることがわかっています。発情を重ねるごとに予防効果は薄れていきますが、遅くとも2回目の発情前に不妊手術を受けることで、かなり高い確率で発生を予防できます。
高齢犬に多い子宮蓄膿症の予防にも効果があるため、将来的に妊娠や出産の予定がない場合は、早めの不妊手術を検討しましょう。
さらに、乳腺腫瘍ができてしまっても、転移する前に発見・治療できれば、完治の可能性が高くなります。
普段からスキンシップを通じて、愛犬の体にしこりがないか触れる習慣をつけましょう。また、体調に変化がなくても、定期的に健診を受けることもおすすめです。
まとめ
不妊手術のタイミングや乳腺腫瘍のリスクについて、しっかり理解しておくことが、愛犬の健康を守る一歩です。また、乳腺腫瘍の知識を日頃から持つことで、いざというときにも適切な判断ができるようになります。
愛犬の健康を支えるために、定期的な健診とスキンシップを通してのチェックを習慣にし、安心して暮らせる毎日をサポートしていきましょう。
■しこりに関連する記事はこちらで解説しています
・愛犬のできもの(イボ)に気づいたら?|獣医が教える原因と対処法
栃木県佐野市にある犬、猫専門動物病院
させ犬猫の病院