膵臓は重要な消化酵素とホルモンを分泌する臓器です。この膵臓に炎症が起き(膵炎)、膵臓の消化液が周囲に漏れ出すと、膵臓や周囲の組織がダメージを受けて非常に強い腹痛や嘔吐が引き起こされ、命にかかわる場合もあります。
この記事では、犬と猫の膵炎について原因や症状、治療方法、予防方法などを詳しく解説します。
■目次
1.膵炎とは何か?
2.膵炎になってしまう原因
3.症状
4.診断方法
5.治療方法
6.予防方法
7.まとめ
膵炎とは何か?
膵炎は、何らかの原因で膵臓に炎症が起きてしまい、膵臓が過剰に消化酵素を分泌し、それが膵臓自体や周囲の組織を消化してしまう病気です。
膵臓は、消化を助ける酵素と、血糖値を調節するインスリンを含むホルモンを分泌するため、膵炎になると消化不良や糖尿病などのさまざまな問題を引き起こす可能性があります。
膵炎になってしまう原因
犬と猫における膵炎になってしまう原因として、以下のものが考えられています。
・不適切な食事:脂肪分の高い人間の食べ物など
・遺伝的要因:ミニチュア・シュナウザーやシェットランド・シープドッグ、コッカー・スパニエルなど
・薬物の摂取
・代謝疾患:副腎皮質機能亢進症、糖尿病、甲状腺機能低下症など
・物理的な膵臓の損傷
中高齢以降での発生が多いですが、若くても発生する可能性があります。
症状
膵炎には、「急性膵炎」と「慢性膵炎」があります。
・急性膵炎の場合
急性膵炎は突然発症し、激しい腹痛や嘔吐、下痢などの症状がみられます。強い腹痛に見舞われた際には、祈りの姿勢とも呼ばれる、お尻を上げた状態でうずくまる様子も見られることがあります。
深刻な状況では、「ショック、呼吸障害、多臓器不全」などの重篤な症状が伴い、命を脅かす可能性もあります。
一方で、軽度の不調であれば、わずかに気分が悪い、または食欲不振に留まる場合もあります。
・慢性膵炎の場合
慢性膵炎は、長期にわたる軽度の炎症が続くのが特徴です。
食欲不振や嘔吐、下痢などがみられることもありますが、特徴的な症状が現れないことも多く、症状だけではなかなか判断がつきません。
この状態は徐々に膵臓の機能を低下させ、消化不良や糖尿病を引き起こす原因となります。
また猫の場合、犬のように特徴的な症状がみられないことがほとんどです。
診断方法
膵炎の診断は、臨床症状に加えて血液検査や画像診断の結果に基づいて行われます。
血液検査では、膵臓特異的リパーゼの増加など膵炎を示すマーカーが確認されます。
画像診断には、超音波検査やX線検査が用いられ、膵臓の炎症や損傷の有無を詳細に確認することができます。これらの検査により、膵炎の有無、重症度、他に考えられる病気の可能性を確認できます。
治療方法
急性膵炎の場合、迅速な対応が求められます。すぐに脱水状態を緩和するために点滴治療を開始します。さらに、痛みを軽減する鎮痛剤、感染を防ぐための抗生物質、炎症を抑える抗炎症剤、そして吐き気を抑制する薬が処方されることもあります。
慢性膵炎の場合は、特定の治療方法が確立されていないため、上述の痛みや吐き気を抑制する薬の投与や、食事の管理を通じて症状の悪化を防ぐ対策がとられます。
予防方法
犬と猫の膵炎を予防する上で最も重要なのは、適切な食事管理です。
高脂肪の食事は膵炎のリスクを高めるため、人間の食べ物は絶対に犬や猫に与えないことや、盗み食いなどもされないよう十分注意してください。
また、ペットが肥満にならないように注意し、定期的な運動を行うことも重要です。
まとめ
膵炎は犬でも猫でもよく起こる病気ですが、重篤化した場合、多臓器不全になったり、出血が止まりにくい状態になったりして亡くなってしまうこともあるため注意が必要です。嘔吐や下痢など比較的軽い症状でも「膵炎かもしれない」と考え、できるだけ早めに動物病院で診察を受けるようにしましょう。
栃木県佐野市にある犬、猫専門動物病院
させ犬猫の病院