犬の肝臓腫瘍と脾臓腫瘍は、致命的な状態に陥るまでなかなか症状が出にくい厄介な病気です。症状が出る頃にはすでに末期であることも少なくないため、定期検診によっていち早く腫瘍の存在に気がつくことが何よりも大切です。
この記事では、犬の肝臓腫瘍と脾臓腫瘍について詳しくご紹介しますので、大切な犬の健康を守るために、ぜひ最後までご覧ください。
■目次
1.犬の肝臓腫瘍について
2.肝臓腫瘍の主な症状
3.肝臓腫瘍と脾臓腫瘍の関連性
4.診断方法
5.治療オプション
6.ご家庭で気を付けること
7.まとめ
犬の肝臓腫瘍について
肝臓腫瘍は犬ではそれほど発生頻度は高くないものの、良性よりも悪性の方が多くみられます。悪性腫瘍は種類によって悪性度が大きく異なり、肝細胞がんのように進行がゆっくりで手術で治療可能なものから、血管肉腫のように進行が早く予後が極めて悪いものまでさまざまです。
また、一般的な腫瘍と同じように高齢犬に多く発生します。明らかな好発犬種はいませんが、プードルやラブラドール・レトリーバーなどで好発しやすいという報告もあります。
肝臓腫瘍の主な症状
肝臓腫瘍は、悪性であっても症状が出にくいという特徴があります。この病気は無症状のことも多く、症状がみられたとしても元気や食欲の低下、嘔吐といった非特異的なものがほとんどで、初期の段階ではなかなか気が付きにくい病気です。
ただし、進行すると腹水や黄疸、肝不全などがみられ、命に関わることもあります。
肝臓腫瘍と脾臓腫瘍の関連性
犬の脾臓腫瘍は比較的発生率が高く、悪性腫瘍の多くは「血管肉腫」とよばれるものです。血管肉腫も腫瘍がかなり大きくなって破裂するまでほとんど症状がみられず、肝臓などに転移しやすい傾向にあります。
診断方法
肝臓腫瘍や脾臓腫瘍の診断では、触診や血液検査、レントゲン検査、超音波検査などを行います。また、必要に応じてCT検査や細胞診(腫瘍に針を刺して顕微鏡で観察する検査)などを行うこともあります。
治療オプション
肝臓腫瘍も脾臓腫瘍も基本的には外科的治療が選択されます。しかし、どちらの手術も出血を起こすリスクが高いことに注意が必要です。
また、肝臓腫瘍についてはまだ有効性は認められていないものの、脾臓の血管肉腫については抗がん剤治療を行うことにより、寿命が少し延びる可能性が期待されています。そのため、術後には補助的に抗がん剤治療も行います。
ご家庭で気を付けること
肝臓腫瘍と脾臓腫瘍は血液検査や画像検査で早期発見が可能であるため、定期的に健康診断を受けるようにしましょう。
また、初期症状は老化によくみられる変化と似ているため、見分けがつかずに発見が遅れてしまうこともあります。そのため、老犬であっても元気や食欲に異常がみられた場合は、念のため動物病院で検査を受けるようにすると、万が一の時に安心です。
肝臓腫瘍と診断された場合は、肝臓に優しい食事と生活習慣を心がけることも大切です。肝臓病用の療法食が各メーカーから種々販売されているため、その子その子に合った適切なものを動物病院で処方してもらうようにしましょう。
まとめ
肝臓や脾臓の腫瘍はかなり進行するまで気が付かないケースも多く、症状が出る頃にはすでに末期状態であることも少なくありません。実際に健康診断で偶然発見されるケースも少なくないため、定期的に健康診断を受けることが大切です。
健康診断は当院で行うことも可能ですので、ぜひお気軽にお声がけください。
<参考>
獣医内科学第2版(文永堂出版) P.265‐266
栃木県佐野市にある犬、猫専門動物病院
させ犬猫の病院