愛犬や愛猫の歯が茶色や黒く変色しているのを見かけたことはありませんか?
実は、こうした歯の変色には、放置しても問題のないケースから歯の病気につながるものまで、さまざまな原因が潜んでいます。そのため、大切な犬や猫の健康を守るためにも、変色に気づいたら早めに動物病院で診察を受けることが大切です。
今回は、犬や猫の歯が茶色や黒くなる原因や対処法について解説します。
■目次
1.健康な歯との違い
2.犬や猫の歯が変色する原因とは?
3.歯の変色に伴って現れる可能性がある他の症状
4.診断方法
5.治療法と対処法
6.予防法
7.獣医師の診察が必要なケース
8.まとめ
健康な歯との違い
犬や猫の健康な歯は白くてツヤがあり、表面もなめらかです。
しかし、年齢とともに歯が茶色や黒っぽく変色することがあり、表面のザラザラやボコボコとした凹凸が見られることもあります。
犬や猫の歯が変色する原因とは?
犬や猫の歯が茶色や黒っぽく見える場合、以下のような原因が考えられます。
・色素沈着
硬いものを食べたり噛んだりすると、歯の表面(エナメル質)に細かい傷がつき、そこに食べ物や飲み物の色素が沈着してしまうことがあります。
・歯石の付着
食べかすが歯に残ったままになると、歯垢がたまりやすくなります。この歯垢は数日で石灰化して歯石になり、歯の色が茶色や黒に変わって見える原因となります。
・歯髄壊死
硬いものをかじったり、事故などで強い衝撃が加わったりして歯が折れると、歯の内部にある神経(歯髄)が壊死し、歯が黒っぽく変色することがあります。
歯の変色に伴って現れる可能性がある他の症状
犬や猫の歯が茶色や黒っぽく変色しているとき、以下のような症状が一緒に見られることもあります。
・口が臭う(口臭が強くなる)
・食欲が落ちる
・食べ方がいつもと違う
・口の痛みや不快感を示すしぐさをする
・歯茎の腫れや、出血がある
これらの症状が歯の変色と同時に現れた場合、歯石が原因で歯周病が進行しているか、歯髄壊死などが起きている可能性があります。
診断方法
犬や猫の歯の変色は、表面を見ただけでは原因がはっきりしないことが多く、正確な診断には口腔内の詳しい検査が必要です。
例えば、デンタルX線検査では歯の内部や根の状態を確認できるため、変色の原因をより詳しく調べることができます。
また、必要に応じて血液検査やCT検査を行う場合もあります。これにより、歯や歯茎の状態だけでなく、全身の健康状態も含めて確認が可能です。
治療法と対処法
歯の変色が色素沈着の場合、歯磨きやデンタルケア製品を使ったホームケアで色素が薄くなることがあります。人では歯の表面を削る「着色除去」が行われることもありますが、美容目的が主であり、犬や猫には一般的ではありません。
一方、歯石が原因の場合や歯髄壊死が見られる場合は、獣医師による治療が必要です。歯石が軽度であればスケーリング(歯石除去)で対応できますが、重度の歯石や歯髄壊死がある場合には、根管治療や抜歯といった歯科治療が必要になります。
さらに、歯の問題が進行して全身に影響が出ている場合は、症状に合わせた薬物療法や点滴などの治療も合わせて行う必要があります。
予防法
犬や猫の歯の変色を防ぐためには、日々の歯磨きと定期的な歯科健診が欠かせません。
日々の歯磨きを習慣にすることで歯石や歯垢が蓄積しにくくなり、口腔内の健康が保たれます。
もし歯磨きを嫌がる場合は、デンタルケア用のおもちゃやおやつを活用して、少しでも楽しくケアをサポートしてあげるとよいでしょう。
また、歯の健康状態をしっかり確認するためには3ヶ月から半年に1回、動物病院での歯科健診を受けることが推奨されます。定期的にチェックすることで早い段階で異常を発見し、適切なケアを行うことが可能です。
さらに、歯の健康を維持するためには適切な食事管理も重要です。硬すぎるおやつや色の濃い食べ物はできるだけ控え、歯石がつきやすいウェットフードも避けるように心がけましょう。
獣医師の診察が必要なケース
以下のような症状が見られた場合、歯の健康だけでなく全身にも影響を及ぼす恐れがあるため、早めに獣医師に相談しましょう。
歯周病が進行して重度になると、全ての歯を抜かなければならない場合や、全身の健康状態が悪化する場合もあります。
・急に歯が変色した
・変色に伴い痛みや不快感を感じている様子がある
・食欲不振や、行動に変化が見られる
・口臭が悪化したと感じる
まとめ
愛犬や愛猫の歯が茶色や黒っぽく変色している場合や、心配な症状が見られる場合は、迷わず獣医師に相談しましょう。
早期発見と早期対応により、できるだけ多くの歯を健康に保てる可能性が高まります。
そのため、日頃から口腔ケアをしっかり行い、定期的に獣医師による歯のチェックを受けることが大切です。
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