「最近、うちの子の歩き方が少し気になる…」と感じたことはありませんか?
実は、犬や猫も関節炎になることがあり、その症状は気づきにくい場合があります。しかし、関節炎は早期発見と適切な対応が非常に重要な病気です。
関節炎を放置してしまうと、痛みが慢性化し、愛犬や愛猫の日常生活に支障をきたしてしまう可能性があります。さらに症状が進行すると、歩くことが困難になってしまうこともあります。
今回は、犬や猫の関節炎について、主な症状や治療法を解説します。
■目次
1.関節炎とは?
2.原因
3.関節炎の症状とサインを見逃さないために
4.関節炎の検査や診断方法
5.治療方法
6.治療期間と通院の頻度
7.予防と日常のケア方法
8.まとめ
関節炎とは?
関節炎とは、関節に炎症が起きることで、痛みや腫れを引き起こす状態を指します。
関節炎の発症リスクは年齢や犬種・猫種によって異なります。特に大型犬は若い頃から関節炎になりやすい傾向があります。たとえば、ラブラドール・レトリバーやジャーマン・シェパードは注意が必要です。
一方、猫の場合は加齢による影響が大きく、ある研究では12歳以上の猫の約90%が関節炎を患っていると報告されています。
原因
関節炎の原因はさまざまですが、主に以下のような要因が関わっています。
・加齢による自然な摩耗
年齢を重ねるにつれて関節の軟骨が徐々にすり減り、炎症や痛みを引き起こしやすくなります。
・遺伝的要因
特定の犬種や猫種では、関節炎のリスクが遺伝的に高い場合があります。大型犬や特定の品種では特に注意が必要です。
・過度の運動
若い頃に関節へ負担のかかる激しい運動を続けていると、後々関節炎を引き起こす原因となることがあります。
・肥満
体重が増えることで関節にかかる負担が大きくなり、関節炎のリスクが高まります。
・外傷
怪我や関節へのダメージがきっかけとなり、炎症が起こることがあります。
関節炎の症状とサインを見逃さないために
犬や猫が関節炎を患うと、以下のような症状が現れることがあります。
・歩き方の変化:足を引きずる、ぎこちなく歩く
・活動量の減少:散歩や遊びを嫌がり、元気がなくなる
・関節の異常:腫れや熱感があり、触ると嫌がる
また、以下のような行動の変化にも注意してください
・高い所へ飛び乗らなくなる(特に猫)
・階段の上り下りを避ける
・以前より寝ている時間が増える
特に猫は痛みを隠す傾向があるため、些細な変化も見逃さないことが重要です。これらのサインに気づいたら、早めに動物病院で相談しましょう。
関節炎の検査や診断方法
関節炎が疑われる場合、まずは視診や触診を行い、関節の状態を確認します。腫れや熱感、痛みがあるかをチェックし、歩き方や動き方の様子も注意深く観察します。そのうえで、より詳しく調べるために以下のような検査が行われます。
・レントゲン検査
関節の変形や隙間の狭さを調べるために行われます。
・CT検査やMRI検査
軟骨の状態や関節の微細な異常を詳しく確認するために行われます。これらの検査では、軟骨の損傷や微細な変化を確認することが可能です。
・関節液の検査
関節液を採取して調べ、炎症の程度や感染の有無を確認します。他の病気と区別する際にも役立つ検査です。
・血液検査
関節炎の原因や全身の健康状態を確認するために行われます。
治療方法
関節炎の治療は症状や状態に合わせて行われ、主に以下の方法があります。
<薬物療法>
痛みや炎症を抑えるために、獣医師が適切な薬を処方します。また、関節の健康をサポートする目的で、グルコサミンやコンドロイチンなどのサプリメントが効果を発揮する場合もあります。
<手術>
関節炎が進行し、重度の症状が見られる場合には、人工関節置換術などの手術が選択肢に挙がることもあります。
治療期間と通院の頻度
関節炎の治療期間には個体差がありますが、多くの場合、生涯にわたる管理が必要となります。症状の進行を抑え、快適な生活を維持するためには、定期的なケアが欠かせません。
通院のペースは、症状の程度や治療方法によって異なりますが、一般的には以下のような流れです。
・治療開始直後(初期):1~2週間に1回
・症状が安定した後:1~3ヶ月に1回
最近では、月に1回の注射で痛みを管理する新しい治療法が登場しています。この方法は、通院回数を減らしながら効果的に症状を抑えることができるため、飼い主様の負担軽減にもつながります。
予防と日常のケア方法
関節炎を予防し、愛犬や愛猫が健康で快適に過ごせるよう、以下のポイントを日常生活に取り入れてみてください。
・適切な体重管理
肥満は関節に大きな負担をかけるため、適正体重を維持することが重要です。バランスの取れた食事を心がけ、体重が増えすぎないように注意しましょう。
・適度な運動
過度な運動は関節に負担をかけますが、適度な運動は筋力を維持し、関節をサポートする効果があります。獣医師と相談しながら、愛犬や愛猫に合った運動量を見極めることが大切です。
・環境整備
滑りやすい床は関節への負担や怪我の原因になるため、ラグやマットを敷いて足元の安全を確保しましょう。また、段差の多い場所ではスロープを設置するなどの工夫も役立ちます。
・サプリメントの活用
グルコサミンやコンドロイチンなどの関節に良い成分を含むサプリメントを、獣医師と相談のうえ予防的に取り入れることもおすすめです。
また、定期的な健康診断を受けることで、早期発見・早期治療につながります。
特に高齢の犬や猫、または関節炎のリスクが高い品種の場合、年に1~2回の健康診断を受けることをおすすめします。
まとめ
犬や猫の関節炎は、早期発見と早期治療が鍵となる病気です。日頃から愛犬や愛猫の行動や体調をよく観察し、少しでも気になる様子があれば、迷わず獣医師に相談してください。
適切な治療と日常的な管理を行うことで、関節炎による痛みを和らげ、愛犬や愛猫が快適に暮らせるようにサポートしていきましょう。
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