犬の前十字靭帯断裂は、犬の整形疾患においてよく遭遇する病気の一つです。これは、犬の膝関節における重要な靭帯の一つが断裂することにより発生し、犬の運動能力に大きな影響を与えます。飼い主様が、愛犬の前十字靭帯断裂に気づかず放置すると、慢性的な関節の不安定性や関節炎につながる可能性があります。
飼い主様がいち早く、愛犬の前十字靭帯断裂に気付くためにもこの記事では、犬の前十字靭帯断裂に関して、その原因や症状、治療方法、予防方法について詳しく解説します。
■目次
1.原因
2.症状
3.診断方法
4.治療方法
5.予防法やご家庭での注意点
6.まとめ
原因
前十字靭帯断裂は、様々な要因によって引き起こされますが、特に影響を与えるのが加齢です。年齢とともに、靭帯の弾力性や強度が劣化し、小さな怪我やストレスでも断裂しやすくなります。
また、運動中の怪我により前十字靭帯断裂が起こることがあります。走る、跳ぶ、急に方向を変えるなどの動作が、膝関節に大きな負荷をかけ、靭帯に急激な圧力が加わることで断裂につながります。特に、肥満犬では注意が必要です。また、滑りやすい床や不均一な地面での活動も、膝関節への負担を増加させ、断裂のリスクを高める可能性があります。
特に大型犬種（ラブラドール・レトリーバーやハスキーなど）は、前十字靭帯断裂のリスクが高いとされています。
ただし、小型犬や中型犬でも発症する可能性があるため注意が必要です。
症状
痛みから足を引きずったり、負傷した足を地面につけなかったりする症状がみられます。また、断裂部位には腫れや変形が見られ、触れると犬が痛みを示すことがあります。
また、部分的な靭帯断裂の場合、強い症状が出ず、飼い主様には痛みを訴えているように見えないこともありますが、実際には関節炎をかばっているかもしれません。このような状態が見過ごされ、適切な治療が行われないと、最初は部分的な断裂であっても完全断裂へと進行したり、変形性関節症を発症したりする危険性もあります。
さらに、前十字靭帯の断裂は片方の膝に起こることが多いですが、断裂した足をかばい続けることで健康な方の膝にも負担がかかり、結果として両方の靭帯が断裂する事例も珍しくありません。
診断方法
まずは、身体検査を行い患部の触診や膝関節の可動域の確認、歩行時の様子を確認します。
また、脛骨前方引き出し試験や脛骨圧迫試験と呼ばれる検査を行い、膝関節の安定性を確認します。
その後、X線検査で断裂の程度などを確認し、総合的に診断します。
治療方法
治療法には主に保存療法と外科手術があります。
保存療法では、軽度の損傷や手術リスクが高い犬に適しています。これには運動制限や体重管理、抗炎症薬の使用、理学療法などが含まれます。しかし、一度切れてしまった靭帯は再生することはありませんし、再発のリスクがあるため、基本的には手術を実施して膝の関節を安定させることをお勧めします。
当院では、外科手術でTPLO（脛骨プラトー水平化手術）や関節外法を採用しております。
TPLOでは、部分断裂や慢性経過をとる変形性関節症に適応でき、骨関節炎の進行が低く、術後早期回復が望めると考えています。
予防法やご家庭での注意点
足にかかる負荷を減らすため、普段からおやつの食べすぎには注意して、適度な運動で肥満を予防しましょう。
また、急な方向転換や高い場所からの飛び降りなど、膝に負担をかける活動を避けるようにしましょう。加えて、フローリングに滑りにくいマットなどを敷くことや、足裏の毛はこまめにカットして、愛犬が滑って膝に負担をかけないよう気をつけましょう。
まとめ
犬の前十字靭帯断裂は、加齢に伴い弱った靭帯に肥満や滑りやすい床での生活などでストレスが加わり続けることで起こります。普段からの生活で、体重管理を行い膝に負担をかけないよう気をつけましょう。また、前十字靭帯は一度切れてしまうと自然には治らないので、少しでも異常を感じたら早めに受診しましょう。
栃木県佐野市にある犬、猫専門動物病院
させ犬猫の病院
