犬や猫における鼻腔の腫瘍は、全腫瘍の約1%を占める比較的発生率が低い疾患ですが、悪性度が非常に高く、進行も速いことが特徴です。初期症状が目立たないため、早期発見が難しい病気でもあります。
この記事では、犬と猫の鼻腔の腫瘍について症状や検査方法を詳しく解説し、早期発見と早期治療に繋げていただければと思います。
■目次
1.鼻腔の腫瘍とは?
2.症状
3.原因
4.検査方法
5.治療方法
6.まとめ
鼻腔の腫瘍とは?
鼻腔の腫瘍は、鼻の内部に発生する腫瘍で、良性と悪性の両方が存在しますが、犬と猫では悪性のものが一般的です。以下に代表的なタイプを紹介します。
〈犬の鼻腔腫瘍〉
・扁平上皮癌
扁平上皮細胞が癌化することにより発生します。また、扁平上皮癌は悪性度が高く、進行も早いです。
・腺癌
腺組織から発生する癌で、悪性度は低く、転移することは稀です。
〈猫の鼻腔腫瘍〉
・リンパ種
リンパ組織の異常な増殖により発生し、全体的な免疫系に影響を与える可能性があります。
症状
初期には、くしゃみや鼻水などの症状がみられ、鼻炎との区別がつきにくく進行し鼻出血や顔の変形(鼻の一部が隆起する、圧迫により眼が飛び出るなど)が起きてから気づかれることが多い疾患です。
また、腫瘍が大きくなると脳を圧迫し、神経症状や発作が表れることもあります。
鼻腔の腫瘍は肺やリンパ節への転移は少ないですが、鼻腔内に発生した腫瘍の成長をいかに抑制できるかが治療のポイントとなります。
原因
鼻腔内腫瘍の明確な原因はよくわかっていませんが、高齢の犬猫やダックスフントなど鼻が長い犬種に多く発生するという報告があります。
また、タバコの副流煙が発生率を高める可能性も指摘されています。
なお、猫のリンパ腫では猫白血病ウイルスへの感染が要因となることが多いですが、鼻腔内リンパ腫に関しては猫白血病ウイルスとの関連はあまりないとされています。
検査方法
視診や血液検査で状態を把握するとともに、画像診断と細胞診が重要です。X線検査では重度の鼻炎と腫瘍の鑑別が困難ですが、CT検査は腫瘍の発生部位や転移の有無を特定するのに非常に有用で早期発見にも繋がります。
CT検査では腫瘍の有無以外にも骨浸潤の程度や周囲の組織への影響、肺やリンパ節への転移の有無など様々な情報を得られます。また、CT検査の際には全身麻酔が必要であり、このとき腫瘍の一部を切り取って専門機関での分析に送ることがあります。
治療方法
腫瘍が局限していれば、手術による完全な切除が可能な場合がありますが、鼻腔の解剖学的な複雑さにより困難な場合も多いです。
他の鼻腔内腫瘍では、
・放射線療法
・化学療法
・対症療法
・非ステロイド性消炎剤
などが選択されます。
まとめ
鼻腔内の腫瘍は、初期には鼻炎のような症状で現れるため、腫瘍が発生しているとは思われにくいです。鼻炎のような症状が続く場合には、早めにCT検査を行い腫瘍が出来ていないか確認するとよいでしょう。
栃木県佐野市にある犬、猫専門動物病院
させ犬猫の病院